長嶺さん、大丈夫ですか?
「大丈夫よ。 花ちゃん可愛いんだから。 きっとすぐにまた次の恋、できるわよ」


 私の頭を撫でてくれる東さんの優しい言葉に、私は絶望した。

 つまり、この恋はもう終わりにしなくちゃいけない?

 恋というものがこんなにも心身に影響を及ぼすものだと知らなかった。
 恥ずかしくてくすぐったくて、泣きたくなるほど胸が苦しい、こんな気持ちになるものだったなんて。
 この恋は、23年なんの音沙汰もなかった私がようやく出会えた奇跡みたいなものだ。
 それなのに、気付いた瞬間もう終わり?

 東さんの言うように、すぐにまた出会えるものなんだろうか。
 この気持ちを大事にしたいと思うのは、いけないことなんだろうか。

 ……長嶺さんも、誰かに対してこんな気持ちになったことがあるんだろうか。

 もしそうだったとしたら

 その〝誰か〟は、どんな人なんだろう。



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