長嶺さん、大丈夫ですか?
「理子はあんまりこういうとこくるタイプに見えないね。 今日はなんか理由があってきたの?」

 そうぼやきながらスマホを開き、タシタシと操作する。
 いきなりの呼び捨てと、初対面でスマホ見ながら話しかけてくる自由さにビックリしつつ、一応真面目に返事をする。

「……勉強です」

「なんの?」

「遊びの」

 太一さんはスマホから私に目を向けて、穏やかな目を大きく開いたかと思うとすぐにまた穏やかに目尻を下げていたずらに笑う。

「それは楽しそうな勉強だね」

 太一さんはスマホを閉じて私に向きなおると小首を傾げて、私の顔を覗き込むようにする。

「俺、遊びのプロだよ。教えてあげよっか。手取り、足取り」

 そう言って太一さんの手が私の頬に伸びた。

 それまで太一さんに感じなかった恐怖心に煽られて、体や声で反応しようとした、その時だった。

 私に伸びた手を、突然入ってきた男の人の手がパシッと払った。


「だめ」


 その人の乱れた息に混ざる掠れ声が耳に届いて、反射的に胸が高鳴った。

 バッと顔をあげてその人の背中を視界に入れれば、ワァ、と胸に熱いものが広がるような感覚がした。


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