長嶺さん、大丈夫ですか?
「……長嶺さん……?」


 私と太一さんの間に無理やり入り込んだのは、紛れもなく長嶺さんの背中だった。


「ナンダヨー男いんのかヨー」

「そういうのいいから」

「てか早すぎて引くんだけど。ダッシュしてきた?今日ミナとデートだったんじゃないの?」

 太一さんの知ったような口ぶり。
 二人、もしかして知り合い?


「たまたま近くいただけだよ」

 そう言いながら息を整える長嶺さんは、苛立ちを隠さない顔で私の手からモスコミュールを取りあげた。

「出るよ」

 そう言って長嶺さんは私の鞄を持った。

「あ、は、はい」

 ひと口しか飲めていないモスコミュールに後ろ髪を引かれていると、


「待った」


 太一さんが私の手首を掴んで引っ張り、グッと力強く肩を抱いた。


「俺、理子のこと気に入っちゃった。貰ってもいい?」

「え」


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