長嶺さん、大丈夫ですか?
 そのまま私たちは店を出て、お酒が入って楽しそうにする人たちがたくさん行き交う歩行者天国の中を歩き出す。

「長嶺さん、あの、太一さんとお知り合いだったんですか?」

 信号に差し掛かって手を離された時、長嶺さんの横顔に聞く。
 長嶺さんはため息とともに小さく返事をした。

「……まあね」

 長嶺さんはちらりと不機嫌な目を私に向ける。

「言っとくけど、あいつ人良さそうな顔して俺よりずっとたち悪いからね。 まさか連絡先交換した? したなら消して、今すぐ」

 仕事中でもこんな風に強い口調で前のめりの指導をされたことはないから、思わずたじろぐ。

「連絡先交換は、してないです」

「……あっそ」

 長嶺さんはぶっきらぼうに言うと、また歩行者信号の赤に目を戻した。

 え……怒ってる? そんなに怒る?
 ストーカーみたいなことして引かれた、とか……?
 
 信号が青に変わり、ピッポウ、と呑気な音を鳴らす。
 長嶺さんは当たり前に私の手を掴んで歩き出した。

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