長嶺さん、大丈夫ですか?
 きっと私、相当ひどい顔だ。

 こんな顔見られてると思うと恥ずかしい、いやだ、見ないで欲しい……


 そう思って顔を俯かせようとした、直後のことだった。




「……ほんとバカ。 こんなことしなくても、もう一番近いとこにいるのに」



 
 言葉の意味がわからなかった。

 理解する前にフ、と吐息が口元にかかる気配がして、唇に、柔らかい何かを押し付けられる感触がした。



 その感触は熱くて、優しくて。

 一瞬のことで、何が起こったのかわからなかった。



 思わず開いた視界いっぱいに長嶺さんがいて、ますますわからなくなる。


 え?

 まさか、キス?

 いやいや、まさか……


 長嶺さんは私が何か言う隙を与えずに目を伏せて、さっきと同じ柔らかいものを私のそれに押し付ける。



「っ、ん」



 そして、私の反応をためすようにじ……と見る。



「……え?」



 完全に思考が停止した。


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