長嶺さん、大丈夫ですか?
「…………キス、ですか?」


 確信が持てなくて、確認した。


「うん」

「え……?」


 長嶺さんの目には曇りがない。


「あの、長嶺さんが、私に、キスをしましたか?」

「うん。同意ないキスだから強制わいせつ。訴える?」

「……ません」

「ん。よかった」


 そう言って顔を傾けた長嶺さんは、また唇を寄せる。
 今度はちょっとだけ長くて、私はわけがわからないまま長嶺さんにしがみついてそれを受け入れる。

 そして思う。

 一体なにが起こってるんだろう。

 どうして、なんて冷静に考察する余裕なんかなく、長嶺さんの甘い熱がすぐそこにあることに体温は急上昇、心拍はどんどん速くなって息することもままならない。
 離れるときにちゅ、と音がして、その響きがすごく卑猥に聞こえてまたさらに全身が熱くなった。


「っ、あ、あの、」


 言葉を探す私を、長嶺さんが抱きしめた。


「……!」


 鼻を掠めただけでドキドキするようになってしまった甘い匂いに包まれる。


「理子ちゃん」


 耳元に聞こえた掠れ声に、腰からゾクゾクッと痺れるような刺激が走った。
 

 
「……連れ帰っていい?」



 優しい甘い声と裏腹に、私を抱きしめる腕はぎゅう、と力強くて大きくて、体中を熱の波が襲った。


 
 
 
< 126 / 284 >

この作品をシェア

pagetop