長嶺さん、大丈夫ですか?
「どうしたよ。 この酒一杯分くらいは聞いてやるけど」

「……」


 光は俺から離れながら大きなため息を吐いた。
 光がこんな思い詰めた表情をするのはいつぶりだろう。

 ……そうだ

 大学卒業間近で、あの子と別れた時だ。


「……向いてないんだよ」

「うん?」

「俺、恋愛、向いてない」

「……」


 この感じは……本気の告白でもされたか?


「……向いてないってこともないんじゃない」

「向いてないんだよ、優花を好きだった頃の俺のこと覚えてるだろ」


 出た。 『優花』。


「あのときの優花の泣き顔がまだ頭にこびりついてんだよ……ぐちゃぐちゃに泣きながら『やっぱり唯くんといたい』って言った優花の姿が、忘れられない」


 そう言って光は、俺のウィスキーを奪って口に含んだ。
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