長嶺さん、大丈夫ですか?
 長嶺さんは軽く口角をあげて、水みたいに美味しいお酒を飲む私を、温かい目で眺めている。
 
「……ほんと、なんなんれすか?」

「ん?」

「どうしたらそのヘラヘラした顔、崩せるんれす? ムカつくんですけど」

 私ばっかり情けないところを見せてる気がする。 いつも余裕そうな長嶺さんのその顔が崩れるところ、見てみたい。

「……俺の顔が崩れるとこ見たいの?」

「はい、ぜひ」

「んー……」

 長嶺さんは頬杖をついて、じっと私を見た。

「同じベッドに入ったら見れるかもね」


 ……同じベッド?

 長嶺さんは口角をやんわりと上げて、ただただこちらを眺めている。 私も硬直して、ただただ長嶺さんを見返した。 
 二人沈黙して見つめ合ったまま、独特の時間が流れる。

 
「…………ありえません」

 長嶺さんと同じベッドに入るなんて想像がつかな過ぎる。
 真顔で言う私に長嶺さんはフハッと噴きだして笑い出した。

「だね」

 その笑顔が可愛くて、なぜかまた無性に腹が立った。



 
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