長嶺さん、大丈夫ですか?
 光のとどまることを知らない言い訳たちをぼーっと聞きながら思う。
 なんか、無理だと言いつつ、


「めちゃくちゃ前向きに検討してんな」

「は……え?」


 光は垂れ流していた文句を止めて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で俺を見た。


「お前さぁ。 そのクソみてぇな人生計画とその理子ちゃんって子の幸せ、どっちが大事なの?」

「……」


 俺の顔を見たまま硬直する光に、俺は最後の煙を吐いてから立ち上がる。


「つーかお前よりいい男って誰? あ、俺?」

「……は?」

「めんどくさいなら俺に紹介してよ。 処女大好物。 それこそ優しくしてやる自信あるよ?」


 そう言って口角をあげてみせると、いつも爽やかな明かりを灯しているはずの光の目に、これ以上ないほどの闇が漂う。


「ふざけんな、お前だけは絶対にねえ」

「じゃあ誰なら譲れんの」

「……」


 ほらね。 いない。


「……」


 光は顔色を変えて、頭を抱えた。


「…………マジか」


 もう引っ込みつかないとこまで来てることにようやく気付いたらしい光に、つい笑ってしまう。


「おめでと」


 俺は呆然とする親友の頭に千円札をのせて、親友の久しぶりの春を祝ってその場をあとにした。




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