長嶺さん、大丈夫ですか?
 ――土曜日の朝。

 長嶺さんのベッドで目が覚めて、隣で眠る長嶺さんに『愛おしい』って感情が湧いた。
 
 自分の中にこんな感情があったんだって驚くと同時に、自分が添い寝ガールズの一人になったんだってわかって

 長嶺さんのこの無防備な寝顔を、ベッドの上で崩れる顔を、暖かい手つきや温もりも、全部

 長嶺さんのスマホを鳴らす女の子たちはみんな見てるのかもって思ったら、辛くて

 すごく辛くて、悲しくて、腹が立って

 長嶺さんに宝物みたいに触られるほど、優しくされればされるほど、自分の中に汚い感情が芽生えていくのを感じた。

 これ以上優しくされたら、大事にされたら、ハマって抜け出せなくなる。

 欲が出て、どんどん汚い感情に支配されて、おかしくなる。

 きっといつか、自分の母と同じように……立てなくなる時が来る。


「耐えられないですっ、ほかの女の子たちがいるんだって思ったら、気が狂いそうなんです! だから、ごめんなさいっ、」


 私はちゃんと理解していなかった。

 長嶺さんを好きになって、見てもらうのに必死で、その先のことなんて考えもしなかった。
 

「無理です、私には」

 
 恋愛初心者の私には、長嶺さんの世界は大人過ぎたんだ。


「添い寝ガールズにはなれません……っ」


 ぽろぽろと、涙が零れ落ちた。

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