長嶺さん、大丈夫ですか?
 ファイティングポーズする私に長嶺さんが大きなため息をついた。


「……確かに。 信じてって言うほうが無理な話か」


 私に迫るのを諦めたらしい長嶺さんは、腕を組んで後ろの棚に背中をもたれさせた。


「でもしょうがないんだよ。 好きになっちゃったんだから」


 長嶺さんのバツの悪そうな顔に、わからなくなる。

 長嶺さん、本当に真剣に……?

 いや、でも……


 その時、廊下から二人分の男性の声が聞こえてきて、長嶺さんと二人、息を潜める。


「研修まであと何分?」

「あとー、十分だ。 そろそろ会議室行くか。 あ、事前課題のさー……」


 はっと腕時計を見ると、新人研修の集合時間十分前を示していた。

 静かにこちらを見下ろす長嶺さんと視線がぶつかる。


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