長嶺さん、大丈夫ですか?
「とりあえずお酒残ってないみたいで安心したよ」

「……」
 
 昨夜、長嶺さんから渡されたおいしいお水をゴクゴクと飲んだ私は、酔いが醒める代わりに吐き気に襲われ、先輩方に付き添ってもらいながらグロッキー状態で帰りのタクシーに乗りこんだ。


「……ご迷惑おかけして、すみませんでした」

 半分認めてしまった私に長嶺さんはハッと笑う。

「どういたしまして。 飲ませすぎた東さんが全面的に悪いから気にしなくていいよ」

 そう言ってさりげなく私が探していたマニュアルをデスクに置くと、部長の元へと立ち去った。

 ……本当にムカつく。 どうして私がこのマニュアルを探してたこと気付いたんだろう。 長嶺さんの鼻っ柱をへし折る日はまだまだ遠そうで、私は深くため息をついた。


 
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