長嶺さん、大丈夫ですか?
「……もう行きます」


 私は長嶺さんを背に鍵を開け、ドアノブをまわして手前に引こうと力をこめた。

 その瞬間、


「待って」

「!」


 腕でドアが開くのを阻止されたかと思えば、ドアノブを持つ私の手ももう片方の手で覆われる。

 私は背中側から長嶺さんに囲われ、逃げ場を無くされた。


「っ、どいてくださ、」

「悪いけど、もう逃すつもりないから」

「え……?」


 ドアに置かれていた長嶺さんの手が私の顎に移動して、半ば強引に横を向かされる。


「これから全力で理子を落としにいく」

「……!」


 長嶺さんの据わった目と目が合う。


「沼……? 上等だよ。 全部どうでもよくなるぐらいはめさせてあげるよ」


 そう言って長嶺さんは、そのまま顔を近づけて私の唇にその柔らかい唇を押し付けた。


「……!」


 不意打ちのキスに驚いて固まる私から、長嶺さんはゆっくりと唇を離す。

 そして、低い掠れ声ではっきりと言った。
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