長嶺さん、大丈夫ですか?

 
 それから私たちはいくつかの取引先を巡り、全て終えて外に出ると、もう間も無く日が落ちようとするところだった。


「思ったより早く終わったな。あと一件軽く顔出しときたいね。うーん、この辺だと……」


 長嶺さんがスマートフォンで近隣の会社情報をチェックしている中、私はあたりのオフィスビルを見渡して目に入った社名を読んだ。


「あ、ユメアリフーズって過去にうちと取引ありましたよね」


 なんとはなしに言ってみると、長嶺さんがピタ、とスマホを操作する指を止めた。


「ユメアリ……フーズ……」


 こぼすようにいった長嶺さんは、なぜか緊張感をまとっている。


「……? もしかして、過去になにか問題あった会社ですか?」

「あ、いや……かなりホワイトないい会社だよ。 ……うん。 ユメアリフーズいいね。 資料だけでも渡しに行ってみようか」

「はい!」


 長嶺さんとユメアリフーズの会社情報をチェックしてから、歩いてオフィスまで向かう。

 さっき一瞬ピリッとしたのはなんだったんだろう?


「ここの社長が下期の目標に改革したいようなこと言ってたし、最近色々挑戦しようとしてる傾向があるから推しどきかもしんないな。頑張ろー」

「はい!」


 ……長嶺さんはいつも通りだ。 私の気のせい?


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