長嶺さん、大丈夫ですか?
 間もなくユメアリフーズに到着して、受付のにこやかな女性に声をかける。

 今日はアポなしなので資料を渡して軽く挨拶をするだけで、後日改めて約束を取り付けて訪問することにする。

 社外に出ようと、長嶺さんと会社のロビーを歩いていると、外からこちらに向かって歩いてきた40歳ぐらいのスーツの男性が長嶺さんに声をかけた。


「長嶺さん?」

「あ、恩田さん! こないだはどうも!」


 恩田さんは、某洋菓子チェーン店のエリアマネージャー。

 長嶺さんが新人の頃からの付き合いで、よく飲みに行く中らしい。


「いやー奇遇ですね。 ユメアリフーズとも取引があるんですか? さすがだな」

「いえ、これから取引してもらえたらと資料だけ渡しに。 恩田さんはこれから担当の方に会うんですか?」
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