長嶺さん、大丈夫ですか?
「優花。 すぐ戻んないと。 そろそろメーター変わるし蘭と美月が腹減ったって騒いでる」

「あっ、ごめんごめん」


 それからみんなでユメアリフーズを出て、優花さんたちの車がある第一駐車場まで一緒に歩いていくことになった。

 長嶺さんたちは今の仕事がどうとか、子供たちはどうとかいう話に花を咲かせながら都会のビジネス街を抜けていく。

 私と長嶺さんの前を行く二人は、ずっと恋人繋ぎで手を繋いでいる。

 ……昔好きだった人が他の人と幸せそうにするのを見るって、どんな気持ちなんだろう。

 その表情を見るのが怖くて、私は右側を見れない。


「あのね、みねくんの後輩さんで、花樫さんだって!」

「ほー」

「美人さんだよね!」

「あー」


 楽しそうに言う優花さんに、唯さんはあまり興味がなさそうな相槌を打っている。

 ……可愛い優花さんに美人だって言われても、嬉しくない。

 卑屈な考えにしわが寄ろうとする眉間を、懸命に伸ばして堪える。

 お世辞でも褒めてくれてるんだから、なにか返さないと、と思うのに……言葉が出ない。


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