長嶺さん、大丈夫ですか?

 家に遊びに来てって言われて、わかったー…って、さすがに社交辞令だよね……。

 いくら長嶺さんの背中を見つめたって、長嶺さんの心の内はわからない。

 東さんの話では、長嶺さんは優花さんにずっと一途だったと聞いたけど……二人は付き合ってたんだろうか。

 長嶺さん、唯さんとも仲が良さそうに見えた。 過去、何があったんだろう。


 少し歩いて自分たちの車がある地下駐車場に到着すると、私たちはいつものように乗り込んだ。


「そうだ、ユメアリフーズの件は忘れずに日報に入れといてねー」

「あ、わかりました」


 仕事モードに戻った長嶺さんはシートベルトをつけながら言って、私もシートベルトを伸ばしながら横目で長嶺さんを窺い見る。

 相変わらずきれいな横顔に、胸がキュンと疼く。

 長嶺さんはいま、何を考えてるんだろう。


「あの……」

「んー?」


 私はごくりと生唾を飲み込む。


「優花さんとはどういう関係だったんですか……?」


 私が恐る恐るした質問に、長嶺さんは無表情を寄越す。


「……」


 長嶺さんは黙ったままで、してはいけない質問だったかと後悔する。


「すみません、立ち入ったこと聞きました、忘れてくださ……」

「元カノ」


 その瞬間、車内の重力がぐっと重たくなったような気がした。


< 171 / 284 >

この作品をシェア

pagetop