長嶺さん、大丈夫ですか?

 予想外の言葉に、顔を上げた。


「……え?」

「すーげぇした」


 した……って、嫉妬を?


 ため息をついた長嶺さんは、私から目を逸らして独り言のように話し始める。


「正直、優花に会うの怖かったんだよ。 本気で好きだったから。 また気持ちがぶり返して辛くなるんじゃないかって、怖かった。 でも全然そんなことなくて、唯くんと幸せに暮らしてんだってわかったらなんか……むしろ嬉しかった。 ちゃんとただの過去として昇華できてたんだって、安心した。 そんなことより、優花を見てムッとしてる理子が可愛すぎてたまんなかった」


 そこでまた長嶺さんの目に捉えられて、ドキッとする。


「もっと嫉妬しろって思った。 もっと嫉妬して、怒って泣いて俺に縋りついてくればいいのにって」

「……っ」


 ついさっきまで胸を覆ってた黒いモヤが一気に晴れていって、代わりに熱いものが込み上げてくる。


「……それなのに」


 グッと顎を掴まれて、少し強引に長嶺さんの方に向かされた。


「!?」


 キスしちゃいそうな距離で、蔑むような目つきで絡めとられてドクンと心臓が大きく脈打った。


< 173 / 284 >

この作品をシェア

pagetop