長嶺さん、大丈夫ですか?
「唯くんにドキッとしてただろ」

「え……?」

「唯くん来たとき。放心してた」


 ……あ。 した。

 確かにあのとき、ドキッとした。


「唯くん規格外イケメンだから仕方ないけど。 むっかつくわー……」


 長嶺さん。

 それって、なんか、


「よそ見してんじゃねーよ」

「……なんですか、それ」


 いつも余裕な上司の、不機嫌な顔。
 
 
「私のこと、大好きみたいじゃないですか」


 長嶺さんが、は?と顔を歪めた。


「だからそうだって言ってる」


 その子供っぽい表情に、どうしようもなくときめいた。


「っ……」


 この人に落ちないとか、無理だ。


「違いますよ……」


 私は、私の顎を持つ長嶺さんの手を握る。


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