長嶺さん、大丈夫ですか?
「長嶺さん! 前回行った時も好感触でしたし、大丈夫だと思います! きっと契約取れますよ!」

「そうだねー、契約はできちゃいそうだよねー」

 ん? できちゃいそう…?

 意味深な言い方をした長嶺さんは、キョトンとする私に爽やかな笑顔を向ける。

「そうだ。 午前中のシトミズカンパニーの契約、花樫さんやって」

「え!?わた、私ですか!?」

「うん。俺外で待ってるから。ファイトゥ!」

 流れるようにウィンクされた。

「えっ、待ってください! わたし一人で行くってことですか!? そんな突然…っ、困ります! わたし初めてなんですよ!?」

「大丈夫、誰にだって初めてはあるから。 行ける行けるー」

「行ける行ける、じゃないですよ! 契約って、新規契約でしたよね!? これ逃したらどうなっちゃうんですか?」

「俺、兼営業部の予定してた売上が減るー」

「っ、!? 責任重大じゃないですか!!」

「はは、ダイジョブダイジョブー」

「せめて事前に言ってくださいよ! 心の準備とかあるじゃないですか!!」

「えー? それじゃつまんないじゃんー」

「つまんないってなんですか! ゲームじゃあるまいし!」


 駐車場に到着して、長嶺さんは「行ける行けるー」と鼻歌交じりに車に乗り込んだ。

 なんって軽いの……!
 そりゃC’sフードに比べたらだいぶ小さい案件だけど……こんな雑なことある!?
 もうやだ! この上司! ほんと嫌い!! 大嫌い!!



 
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