長嶺さん、大丈夫ですか?
 理子ちゃんは俺の腕をくぐり抜け、手を伸ばしてスマホを開き、怪訝な顔をする。


「イタリアン……?」


 呟いた理子ちゃんの言葉になにか予感がした俺は、理子ちゃんの手首を掴んでスマホ画面を自分の方に向ける。


【花樫さん、おはよう。今夜あいてる?こないだ研修の時に言ってたうまいイタリアン予約したんだ。行こうよ。二人で!】


 差出人は、

山佐(やまさ) (とおる)……」

「あ、同期の人です。 グループワークで一緒になったんですけど、なんで二人なんですかね」


 理子ちゃんは眉間に皺を寄せて首を捻った。


「……」


 そりゃ、鈍いあなたとどうにかなりたいからでしょう。

 俺はスマホを奪い取って、理子ちゃんの代わりにメッセージを打ち込む。


「え!?ちょっと、長嶺さんっ」


 彼氏いるからごめん、汗マーク、と。 はい、送信。


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