長嶺さん、大丈夫ですか?
「ああっ! なに勝手に送ってるんですか!」

「そっちこそなに勝手に男釣ってんだよ」

「え!?釣ってませんよ!」

 
 密かにモテる理子ちゃんは、全く自覚がない。
 女子高育ちで男性経験がなかったから本当にわからないんだろう。

 理子ちゃんはまったくもう、と俺が送ったメッセージを確認して、ムッとした顔をしつつちょっと嬉しそうにしている。 ほんとわかりやすい。 可愛い。


 そのとき、今度は俺のスマホが鳴った。
 すると、理子ちゃんの表情がわかりやすく曇る。


「……」


 俺はスマホに手を伸ばして、中身を確認してすぐ、その画面を理子ちゃんに見せた。


「……フニクロ」


 理子ちゃんはファストファッションブランドからの販促メールを見て、心底ホッとした顔をする。
 俺からのジトッとした視線にに気がつくと、バツが悪そうに目を逸らした。

 きっと今、女の子からだと勘違いした自分に自己嫌悪してるんだろう。


「……ねえ」


 スマホをテーブルに戻して理子ちゃんの手に自分の手を重ねると、理子ちゃんが横目でこっちを向く。


「なんですか」

「キスマつけていい?」

「キスマ……?」

「キスマーク。 花樫理子にマーキングしたい」

「……」


 ……あらら。 真っ赤になっちゃった。

 こんなウブな子を汚してしまったことに、ほんの少し罪悪感が募る。


「……痛くないですか?」

「痛くないよ」


 てか実は昨夜、最中に胸の下あたりにつけちゃってんだけどね。 気付いてないね。


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