長嶺さん、大丈夫ですか?
⌒* ⌒* 



「大丈夫? 花樫さん」

「…………ぃぃぇ」

 私はシトミズカンパニー駐車場内の車中で、文字通りぐったりとしていた。

「いやーさっすが花樫さん。 しっかり契約取ってこれて偉いねぇ。 初契約おめでとーぅ」

 長嶺さんはニコニコしながら私が仕事してる間に買ってきたらしいお弁当を「はい、ご褒美」と差し出した。
 ちなみに最近テレビでも話題の有名店・ニクデアルのローストビーフ弁当である。 とても美味しそうである。

「……いただきます」

 複雑な気持ちでお弁当を受け取ると、疲れがどっと押し寄せてお腹が鳴った。
 
「どうだった? 初契約」

「……とってもドキドキしました」

 なにせあそこの社長さん、すっごくコワモテですし。
 腕にはガッツリ虎がシャーッてしてる刺青入っちゃってますし。
 事務所も反社会勢力のそれですって言われても違和感ない雰囲気でしたし。

 ……だったんですけど。

「緊張で手が震えちゃってペンを落としたら、なぜか社長さんが泣きだしまして」

「あらー」

「私と同い年の娘さんが営業の仕事をしてるそうで、その娘さんと私が重なっちゃったんだそうです。 最後帰る時、頑張ってねってたくさん甘いものをくださいました」

「わ~いい話だなー」

 長嶺さんはパキッと割りばしを割ってお弁当の蓋を開ける。

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