長嶺さん、大丈夫ですか?
⌒* ⌒*



 理子ちゃんに言われた通り、俺は少し時間を空けてから家を出た。
 大体いつもと変わらない時間。 会社は駅の向こう側で、駅の高架下を通勤・通学する人たちに混ざって黙々と抜けていく。
 すると、行く先の道の真ん中を人が大きく避けていくのが見えた。
 なにか大きなものが落ちてるのだろうか。

 
「……!」

 
 道のど真ん中にいたのは、うずくまる一人の女性だった。
 上着はどこかに置いてきたのか汚れたシャツ一枚で、近くに彼女のパンプスが転がっている。
 みんな心配そうに見るだけで、急いでることもあってか、一定の距離をあけて通り過ぎていく。
 近づいていくと、うっうっと嗚咽が聞こえてくる。 どうやら号泣している。
 失恋……? なにかの事件に巻き込まれたってケースもある。
 他の人々と同じように素通りすることも出来たけど、どうしても良心が傷んで、歩くペースを徐々に落とした。
 彼女の前に立ち顔を覗き込むようにして、なるべく優しい声音を意識して声をかける。


「どうしました? 大丈夫ですか?」


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