長嶺さん、大丈夫ですか?
 見ると、タイトスカートも破けてるし、いつも綺麗にまとめられていた髪もボサボサでひどい有様だ。 それに膝や頬に擦り傷があるし、いろんなところにあざも見える。 とにかくただ事ではない。
 麗華さんは放心して力が抜けてしまっていて、コートの前ボタンを閉める気力すらないようだ。
 目のやり場に困るので、俺はやむを得ずボタンを閉めてあげることにした。


「もしかして、誰かに乱暴された……?」


 ボタンを閉めながら聞く俺に、麗華さんは俯いたまま動かず、答えてくれない。


「……警察行きましょう。 そこに交番あるから、」

「いい」

「でも、なにかあったんですよね。 お父さんも心配し、」

「いいってば! ほっといてよ!!」


 麗華さんは公園にとどろくほどの大声で叫んで、ボロボロと泣きだした。


「私、あなたに酷いことしたんだから! これ以上優しくされたら、死にたくなる……っ」


 そ、そう言われても……。

 俺はそれ以上二の句が継げなくなった。

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