長嶺さん、大丈夫ですか?
 ていうかそもそも酷いことだってわかってるなら、最初からしなきゃいいのに。
 なんて考えてる間にもう遅刻確定の時間になった。

 仕方ないので、会社にわけあって遅刻する旨を連絡し、近くの自販機で暖かいお茶を買って彼女に渡す。


「はい」

「……」


 麗華さんはなにか言いたそうにしながらも黙って受け取った。
 俺は麗華さんの隣に座ることはせず、立ったまま缶コーヒーを口にする。

 ……さて、この後どうするか。
 かなり体が冷えてそうだし、このまま公園にいるわけにはいかない。
 家に連れていく? いや駄目だ、どんだけワケアリでもそれはできない。
 つーか会社の近くだし、誰かに見られたら面倒なことになりそう。

 びゅぅ、と冬始まりの風が吹いた。

 さっむ。


「……私、いつもクズな男に引っかかるんです」


 どうやら落ち着いたらしい麗華さんが、魂が抜けたような声で話し始めた。


「……うん?」

「私惚れっぽいから……ちょろいらしいです。 でも一回好きになったら一途に彼だけ愛するし超尽くすし、彼の理想の彼女になれるようにすごい頑張るんです。 それなのに……彼氏になる人はみんな絶対浮気する。 好きだなんて絶対言ってくれない。 今日だって他の女からライン来てて問い詰めたら喧嘩になって、めんどくさいから別れてって言われて…」

「……へぇ」


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