長嶺さん、大丈夫ですか?
「長嶺さん」

「はーい」

「知ってたんですね?」

「ふぇ? なんのこと?」

 長嶺さんが乙女チックに首を傾げた。

「もう! そうならそうと言ってくれればいいじゃないですか!」

 私が盛大に怒り始めると、長嶺さんは「あはは」とそれをフニャ笑顔で誤魔化す。

「社長さん前回契約するつもりで今日ハンコおすだけだったとか! 商談するつもりで前のめりで行っちゃったじゃないですか! 緊張し損じゃないですかぁぁあ!!」

「ん。 めっちゃうまいこれ」

「無視しないでくださいよ!!」

「いやマジでうまいよこれ、食べてみて」


 もぉぉぉおお!!
 なんって上司だ!
 確かに新人がやっても問題ない簡単な案件だったけど!!
 私の大量の冷や汗を返して!!

 私は憤慨しながらお弁当をあけて割りばしを割り、ローストビーフを口に頬張る。


「っ……」


 おいっしぃー……

 そのあまりのおいしさに、一瞬にして天国へトリップした。


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