長嶺さん、大丈夫ですか?
彼氏がかっこよすぎてしんどい。
最近、隣が静かになった。
「……」
右隣のデスク上に置かれたスマートフォンは振動することも光ることも極端に減り、たまに通知が来たと思えば男友達からの飲みの誘いだったりするのを、上司はわざわざ報告してくる。
「あ、花樫さん。 昨日頼んでおいた資料どんな感じ?」
「ちょうど今できたのでフォルダ入れます」
「ありがとー」
静かになった隣の上司の横顔を盗み見て、思わずため息が漏れた。
私の視線に気づいて「ん?」と軽く首を傾げながら微笑む隣の上司が、
「……いえ」
王子様にしか見えない。
私は冷静を装って眼鏡をなおし、PC画面に視線を戻しつつ、また漏れそうになるため息を飲み込んだ。