長嶺さん、大丈夫ですか?

 なんとなくモヤモヤして胸のつかえが取れないまま、昼休憩になった。
 長嶺さんは取引先に行き、最近よく一緒に食べていた東さんも今日は出払ってるので、一人で食堂に向かう。
 途中にある喫煙所から、男性社員の声がした。


「長嶺、シトミズの契約取り戻したらしいよ」

「えっ、あの社長の娘に手出したってやつ?」


 あれは……営業二課の人たちだ。 確か、長嶺さんと同期の人。
 なんとなく話が気になって、柱の陰に隠れて耳をそばだてる。


「そうそう。今朝、社長とお嬢さんがわざわざ謝りに来たんだってよ。 『すべて私たちの誤解でした』って。前の契約より好条件で契約成立して、上の人たちは大喜びよ」

「っかー、ムカつくなぁ、なんでもうまくいきやがって」


 なんか嫌味な言い方だ。
 長嶺さんだってなんでもうまくいってるわけじゃない。
 日々たくさん努力した結果うまくいってるだけだ。
 長嶺さんになにか恨みでもあるのだろうか。

 
「長嶺ってプライベート相当遊んでるだろ。やっぱりお嬢さんとも関係あったんじゃね」


 ……!


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