長嶺さん、大丈夫ですか?
「お嬢さんがセクハラされたって訴えたのも実はお嬢さんと痴情のもつれがあって、今回契約復活したのはお嬢さんとまたよりを戻したから、とか!」

「はは、ありうる!」


 私は思わず柱の影から飛び出した。


「ありえません!!」


 二人が目を丸くして私を見る。


「それ以上適当なこと抜かしたら、コンプラ委員会に訴えますよ!!」

「「す……すいません」」


 フン、と鼻を鳴らして踵を返し、私はツカツカと廊下を歩いていく。


 ありえない、ありえないよ、何言ってるのあの人たち!

 長嶺さんと麗華さんが元々関係を持ってた、なんて!

 絶対、絶対に、ありえな……い……

 ……本当にありえない?

 頭に浮かぶのは麗華さんの恋する乙女な表情と長嶺さんのコート。
 色々とごまかすのが上手な長嶺さんなら、できちゃうかもしれない。
 そもそも麗華さんも、食事の誘いを断っただけでセクハラされた、なんて……そんなひどいことする?

 ああ、だめだ、長嶺さんと付き合ってから以前にも増してさらに疑心暗鬼になってる気がする。

 大丈夫。 長嶺さんはきっと私が悲しむようなことはしない。

 私は、長嶺さんを信じてる!


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