長嶺さん、大丈夫ですか?
 私は暖かくて苦いブラックコーヒーを口にして眉間にしわを寄せた。


「恋愛する気になれないのでと、丁重にお断りしました」

「……まだ元彼を引きずってるから?」

「……」


 押し黙る私に、東さんが小さくため息をつく。


「もー、なんで別れたのよ。長嶺とヨリ戻す気ないの?」

「ありません」

「どうしてよ。 もうすぐほんとにどっか行っちゃうわよ」

「そうですね。はやくどっか行って欲しいです」

「もう!まだ好きなくせに!」

「……」


 その瞬間、ポロッと目から水滴が一粒落ちた。


「!」

「あ、すいません」

「え……?すいません、て」


 私はすぐにその涙を拭いて空を仰いで目を閉じ、深呼吸する。


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