長嶺さん、大丈夫ですか?
 私は小さく拍手して、心の中で勝利の舞を踊る。

 よかった~! 報告したら部長も喜ぶだろうなぁ…!

 笑顔をかわしたまま社長との握手がほどかれると、長嶺さんは契約書を机に置いたまま鞄を持った。

「契約の前に製造の方とご挨拶させてもらってもよろしいでしょうか」

「あぁ、もちろんだよ」

 長嶺さんは私にここで待ってて、とアイコンタクトすると「ちょっと失礼します」と社長に断ってから社長室を出ていった。


 ……あ。 二人きりだ。

 と思った次の瞬間には、社長が座る私のすぐ横に立っていて手を差し出していた。
 ぞわわ、と鳥肌が立つ。

「いやぁ、君たちには期待しているよ」

 あ、握手ですね、これは握手ですね。

 自分だけ座ってるわけにもいかず、立ち上がって両手を出し握手に応える。

「ありがとうございます」

「こんなにいい話を持ってきてもらえるなんて。 もっと前からノイーズさんと取引したかったなぁ」

 はい、握手長いですね。
 とっても長いですね、全然離す気がなさそうですね!

 社長はニコニコしながら左手でサワサワと私の手の甲を撫で始めた。

 うぅ、気持ち悪い……っ!

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