長嶺さん、大丈夫ですか?
「なんか、最近涙腺おかしくて……でもすぐ落ち着くんで……ちょっと待ってください」


 私は、長嶺さんが好きだ。 大好きだ。
 長嶺さんとの時間は幸せだった。 でも、その分つらくもあった。
 離れたらそのつらさはいくらかマシになったけど、こうしてたまにバグが起きて涙が出てきてしまう。


「花ちゃん……」


 東さんが私の背中をさすってくれる。


「それ……結構やばいわよ」


 は、と乾いた笑いが漏れる。


「私もそう思います」


 最近ごはんの味もあまりしなくて、少し不眠症を患ってるなんて言ったら東さんはもっと心配してしまうんだろう。


「恥ずかしながら、恋愛すると相当弱くて重い女だったみたいです」


 弱くて、重くて、めんどくさい女。
 私が一番なりたくなかった女。



 ――つらいのは俺の方なんだ



「フラれて当然です。好きな人の重荷になるより、一人でちょっと泣くくらいのほうがマシです」


 ゆっくりと瞼をあげると、涙はちゃんと止まってくれていた。


「はやく体からこの気持ちを抜いて、元の仕事と生活のことだけ考えてた自分に戻りたいんです。それが一番いいんです」


 きっと長嶺さんにとっても、私にとっても。


「花ちゃん……」


 私は軽く息をついた。


「向いてなかったみたいです。 恋愛」




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