長嶺さん、大丈夫ですか?
⌒* ⌒*
いくつかの取引先を巡って、そろそろ営業所に戻って事務処理をしようと私は足を速めた。
……あ。 そういえばこの辺、シトミズの会社の近くだ。 長嶺さんとよく二人で相談しながら歩い、た……
「!」
行く先に、麗華さんがいた。
もう帰るところだろうか、派手な色のバッグやコートを身につけている。
気付かれる前に逃げよう、と思った瞬間に気付かれて、目があってしまった。
「あ……こんにちは。シトミズさん、今度伺おうと思ってたんです」
曲がりなりにも取引先の令嬢。 一応挨拶はする。
「……どーも」
麗華さんはふいっと私から視線を逸らしてぶっきらぼうに言った。
この人、ほんといい性格してるな。
これ以上なにか話しても互いにストレスが溜まるだけだ。
私は会釈して帰ろうと軽く頭を下げた。
「では、失礼しま 「長嶺さん異動するってほんとですか」
麗華さんは不機嫌を隠さないまま私に聞いた。
それでも彼女の目には切なさが潜んでいて、長嶺さんにまだ気持ちがあることが読みとれた。
「……みたいですね」
「みたいって……他人事ですか」
「他人なので」
「は? 彼女でしょ? そんな言い方、」
「彼女じゃありませんから」
「え……?」
「もう、彼女じゃありません」
なるべく平常心を保って淡々と言ってみせた私に、麗華さんが愕然とする。