長嶺さん、大丈夫ですか?
「長嶺さん!待ってください!」
出口の自動ドアをくぐろうとしたところで背中に聞こえた声に、ヒクッと鼻の横が痙攣する。
軽く息をついて、顔に笑顔を張り付けてから振り向く。
「あ、麗華さん。どうも」
麗華さんは息を切らして、神妙な顔で俺の元にやってくる。
「花樫さんに聞きました、別れたって……!」
「それがなにか?」
麗華さんはばつが悪そうな顔を俯かせる。
「……怒ってます、か」
「……」
『っ……わたし……セフレじゃ、ないですよね』
俺は笑顔を張り付けたまま、感情を最大限閉じ込めて答える。
「まぁ、それなりに?」
麗華さんがビクッと怯えた顔で俺を見上げるけど、もうフォローしてやる義理もない。
「では、お元気で」
これ以上話していたくなくて、麗華さんに背を向けて歩き出した。