長嶺さん、大丈夫ですか?
「っ、待って!」


 次の瞬間、背中にドンッとしがみつかれる。


「私じゃ、だめですか……」


 麗華さんの声は可哀想なほどに震えて、弱々しい。


「これまでのことは謝ります。でも、全部、あなたが好きだからしてしまったことで……っ、好きなんです……!このままおしまいなんて嫌です、お願い、遊びでもいいから……そばにいさせてください」


 ギュウ、と俺の服を掴む彼女が、背中側にいても泣いてるんだってわかる。
 きっと麗華さんは本気で俺のことを好きでいてくれてるんだろう。
 俺は拳をギリ、と握りしめた。



「……好きだったら何してもいいんですか?」



 予想以上に低い声が出てしまって、自分が冷静さを欠いてることに気付かされる。


「え……?」


 落ち着かせようと息を吐き、腰に巻き付いた麗華さんの手を離させると振り向いて笑いかける。


「いいですね。羨ましいです、その単細胞」


 まずい 自分の中に溜め込んでいた毒があふれ出してしまう


「な……」

「わがままなお嬢様に振り回されるお父様が本当に気の毒です。 ご自身のエゴで周りを巻き込むクセ直さないと、一生いい恋愛できないと思いますよ」


 呆然としてる麗華さんに一礼して、踵を返す。


「では」


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