長嶺さん、大丈夫ですか?
モスコミュールを飲み干して。
私の元トレーナーは、福岡支店に異動するらしい。
――連れていきたい彼女? そんな人いませんよ
営業部の誰かとそんな雑談してる長嶺さんの軽い声が聞こえてきたことがあった。
必死に経済状況や新規開拓する企業情報をかき集めていた私は、なんとか心の棘を無視することに成功して、会社で泣いたりしないで済んだわけだけど。
それを見ていた東皐月先輩に、金曜日の夜に連れてこられたのは、おしゃれな和風居酒屋の個室。
「今日の出会いにかんぱーーい!」
4体4の合コンだった。
展開についていけず呆然とする私は、東さんに半ば強引に持たされた生ビールを手にしている。
「初めましてー♡飲食系商社に勤めてます東皐月26歳(仮)でーす♡今日はお酒たくさん飲みに来ました♡よろしくお願いしまーす♡♡♡」
隣の東さんが普段の女王様的性格からは想像つかないような猫なで声で挨拶して、男性陣がフゥー!と盛り上がる。
ちなみに東さんは今年30歳だ。
初めての合コンノリに圧倒されていると、東さんに肘で突かれ「次、花ちゃんよ」と耳打ちされる。