長嶺さん、大丈夫ですか?
「やーまだ」


 太一さんが小児科医の肩を抱いた。
 小児科医、山田さんって言うんだ。


「なんだよ〜邪魔すんなよーぅ」


 ベロンベロンの山田さんは肘で太一さんを押した。


「違うよ、あの子が山田と話したいって」


 小声で言った太一さんは、遠くでほかの男性と話してる今日の幹事の女性を指さした。


「え!?ほんと!?」


 山田さんは跳ねるように立ち上がり、その女性の元へ行く。
 女性に少し疎ましそうにされながらも嬉しそうにする山田さんを遠目に見ながら、私はホッと胸をなでおろした。


「……太一さん、ありがとうございます」

「ん?なにが?」

「あれ?助けてくれたんですよね……?」


 太一さんがフッと笑う。
 

「違うよ。邪魔だったから排除しただけ」

「え?」


 虚を突かれてかたまる私に、太一さんは近づいて耳元にヒソッと囁いた。



「抜けだそ」



 その甘い声が耳の奥に響いて、不覚にもゾクッとした。






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