長嶺さん、大丈夫ですか?

⌒* ⌒*




「何飲む?」

「…………モスコミュールで」

「じゃあモスコミュールとマティーニ」


 太一さんが言うとバーテンダーはかしこまりました、とすぐにドリンクを作り始めた。
 
 太一さんに連れてこられたのは、初めて太一さんと出会った例のバーだった。
 ここに来るのは二回目だ。
 前回同様、目をギラつかせた男性たちとキレイにおしゃれした女性たちでにぎわっている。 やっぱり場違い感は否めないけど、太一さんがいるからか今回は妙に落ち着いていられる。


「あっちの個室行く?」


 ドリンクを受け取りながら、太一さんがニコニコで指さしたのは、ガラス窓で仕切られたブース。 ソファがいくつか置かれていて、中には人目もはばからずキスをする男女がいる。


「……いえ」


 真顔で答えると、太一さんは残念だ、と笑った。
 以前来た時と同じハイテーブルの側で、太一さんと二人横並びで背中を壁に預けてお酒を口にする。 そのやんちゃな風貌を見ていると、外科医だなんてやっぱり信じられない。 しかも八時間も手術をした後だというのに、疲れてる様子が全くない。
 太一さん、何者?

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