長嶺さん、大丈夫ですか?
「ねぇ、理子」


 太一さんが私の肩にかかる髪にそっと触れて梳いた。
 その無骨で男らしい指先は器用に私の髪を巻きながら私の頬を掠める。


「……酒の勢いでさ。 好きでもない男に抱かれる夜があってもいいと思わない?」


 流されるように私は太一さんと目を合わせた。


「一晩中優しく甘やかして、慰めてやるよ」


 その視線は甘く、このままだと本当にどうにかなってしまう予感がした。
 太一さんの手が、私に触れようと頬に伸びる。



「あ」


 そこで、あることに気が付いた。


「ん?」


 デジャヴ。

 過去にも、太一さんが私の頬に触れようとしたことがあった。

 その時は息を切らして迎えに来てくれた人、が……


 思わず入り口のほうを見た。

 当たり前に、その人はいない。



「……いえ、なんでもないです」

「……」


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