長嶺さん、大丈夫ですか?
 私は、前回ほとんど手付かずだったモスコミュールを勢いよく飲み干した。


「…………おい」


 太一さんが心底興ざめしたように言った。


「元カレ思い出して泣いてんなよ」

「すみません」


 ズビッと洟を啜る私に、太一さんはため息をついて煙草に火をつけた。


「なんでそんな好きなのに別れちゃうかね」

「……私のせいです」


 飲み干したグラスに私の涙が落ちて、残った氷がカランと揺れた。


「怖かったんです。 私なんかより可愛い人、魅力的な人、たくさんいるじゃないですか……いつかそういう人たちの元へ行っちゃうかもって思ったら、不安で怖くて、耐えられませんでした」


 太一さんはポツリポツリと話す私の言葉に相槌を打つこともなく、静かに煙草の煙をくゆらせた。


「私、きっと恋愛向いてないんです」

「ハッ」


 太一さんが鼻で笑った。

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