長嶺さん、大丈夫ですか?
「ま、待ってください、誤解です!太一さんじゃないです!」

「誤解ってなにが?」

「私が一緒に居たいのは長嶺さんです……!」


 そこで信号が青に変わって、周囲の人たちが私たちを残して一斉に歩き出す。


「長嶺さんと付き合うのは、正直、つらかったです。長嶺さんがいつ他の女の子に目移りしちゃうかってずっと不安で、怖かったです。それがずっと続くなんて……しかも、近くにいれないなんて、かなりしんどいです」


 声が震え出して、また目から涙がこぼれだす。


「でも、遠くなっちゃっても、どんなにつらくても……長嶺さんのことを好きでいたいです。長嶺さんの特別でいたいです。だから、」

「ストップ」


 長嶺さんが、私の口元に人差し指を置いた。


「え……」

「ちょっと待って」


 無表情で言った長嶺さんは、私の手を引いて青が点滅する道をまた速足で歩き出した。
 駅前のロッカーまで来ると、ポケットから財布を取り出してロッカー中央にあるタッチパネルを操作し始める。

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