長嶺さん、大丈夫ですか?
 え……?

 ちょっと待ってって、なんで、このタイミングで荷物を……?

 もしかして、はぐらかされた?
 
 前向きになろうとしていた心を簡単にへし折られて、体中から力が抜けていく。


 やっぱり、もう遅かった?


 どうしようもない後悔が涙となって、目尻から零れ落ちたその時。

 ピピッと音がして、長嶺さんがロッカーをあけた。

 そして、



 バサッ。

 私にバラの花束を差し出した。



「……え?」



 明るい繁華街の駅前、人でごった返す中に突如現れたキレイな、キレイなバラの花束。

 それを持つ長嶺さんが真剣な表情で、私の目をまっすぐに見て言う。



「結婚しよ」



 思考が、停止した。



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