長嶺さん、大丈夫ですか?
「……」

「……」

「…………」

「……って、いきなり言われるのは重たい?」


 なにも言わず固まる私に焦ったのか、長嶺さんは珍しく顔を赤くさせながら慌てて花束を私から取り返した。


「重いな!さすがにな!いや、そういう心持ちだよってことを伝えたかっただけだから、本当に今すぐ結婚して欲しいってわけじゃな、

「します」


 私は、勢いよく長嶺さんに抱きついた。


「したいです、結婚……!」


 ぎゅう、と愛おしさを力いっぱい込めて抱きしめると、


「……っ」


 長嶺さんはハァ、と息を吐いて脱力して、私の背中に手をまわしもたれかかるようにして抱きしめ返した。


「タイムラグやめろ……」


 耳元に泣きそうなぼやきが聞こえてきて、愛おしくてつい、笑いがこぼれた。


 すると、見守っていた周囲がワッと湧く。


「おめでとー!」「ヒュゥ~!」「よかったな兄ちゃん!」


 この時間の通行人はみんなお酒で出来上がっていて、テンションが高い。

 急に恥ずかしくなって、ボッと顔が熱くなった。


「あ、はは、どうもどうもー」


 長嶺さんは笑いながらテキトーに返すと、私の手を引いてすぐさま逃げるように速足で歩きだした。
 遠巻きに見ていた通行人にも「おめでとう!」と声をかけられてさらに顔を熱くさせながら、私たちは近くの公園に逃げた。
 ようやく人目のないところまで逃げてきた私たちはベンチになだれ込む。


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