長嶺さん、大丈夫ですか?
「あの、花樫さん……? 今の人って……」

「あ、夫です。経営企画部・新規事業推進室の室長、長嶺と言います」

「……!」

「? どうされました?」

「ご結婚、されてたんですね」

「ええ」


 私が左手薬指の結婚指輪を見せると、なぜか悲しそうな顔をする。


「……?なにか不都合ありましたか?」

「いえ……」


 明らかに落胆しているようだ。


「大丈夫ですか……?」

「……はい」


 やっぱりしょんぼりしてる田栗くんを気にしつつ、案内に戻ることにする。
 不意にさっきの光さんのベーを思い出してイラッとする。

 ……今日の晩御飯、光さんの苦手なしらす大量に使おう。


 

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