長嶺さん、大丈夫ですか?

 それは同フロア内の社員が全員退勤して私が一番最後になり、自分も帰ろうと荷物を持って電気を消そうとしていた時のこと。
 私は甘い声と共に給湯室に連れ込まれた。


「……なんですか」


 光さんに、壁ドンされている。


「あれ、わかんない? いいことしようとしてる」


 ドキッとしてしまう自分に自己嫌悪する。


「……だめですよ、会社です」

「もうみんな帰って誰もいないじゃん。つーかこんな遅くまで仕事すんなよ、待ちくたびれたわ」


 そう言って光さんは私の額にキスを落とす。


「っ、待ってなくていいですよ、先に家帰ったらよかったじゃないですかっ」

「え~一緒に帰ろうよー」

「なに高校生みたいなこと言ってるんで……」


 と、言葉を言い切る前に私のポケットのスマホが震えた。


「……あ、田栗くんだ」


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