長嶺さん、大丈夫ですか?
「…………やっぱ帰ろ」

「え?」

「帰って子作りしよ」


 光さんは精悍な顔つきで言って、いそいそと身支度を始めた。


「……」


 いつもの私なら、なにか物申すところなのだけれど。


「?なに?」


 黙りこくる私に、光さんが不安そうな顔をする。


 実は先月から、生理が来てないんです。 常にうっすら気持ち悪いんです。


 ……って言ったら、どんな顔するだろう。


「え?なに?なんか怒ってる?」


 こうやって、いつも余裕な光さんがその顔を崩して動揺する姿……ずっと見てられるなぁ。


「いえ。なんでもないです。帰りましょ」


 この話は家に持って帰ろーっと。


「え!?なに!?」

「あ、今夜はしらすのパスタです」

「うわ、やっぱ怒ってんじゃん」

「ふふっ」


 真剣に考え始める彼の腕に腕を絡めてみる。

 なぜかごきげんな私を不思議そうに見る光さんに、また愛おしさが込み上げた。



< 282 / 284 >

この作品をシェア

pagetop