長嶺さん、大丈夫ですか?
「っふざけるな!!」


 青筋を立てた社長がバァン!!と机を叩いた。

「貴様! どこからものを言ってるんだ、えぇ!? ここはC's フードだぞ! お前らの会社の倍の規模だ! わかってんのか!? この契約をなしにすれば五千万の取引がパーになるんだぞ!!」

「ええ、非常に残念です。 この度は貴重なお時間をいただきありがとうございました」

 長嶺さんは冷静に言って頭を下げると、振り返って私の背にあるドアノブに手をかけた。


「帰るよ花樫さん」


 長嶺さんはそのままドアを開けて、混乱する私の肩を軽く押して外に出るよう促す。


「待ちなさい! 本当にいいのか!? このことはお前たちの上司に報告させてもらうぞ!! この大企業を敵にまわすってことだぞ!! わかってんのか!?」

 大迫力の怒号を投げる社長に長嶺さんは振り返って、


「どうぞ」


 渾身の営業スマイルを返した。

 社長が絶句すると、長嶺さんは軽く会釈を残して社長室の扉を閉めた。



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