長嶺さん、大丈夫ですか?
「戻りましたー」
私から向かって後方にあるオフィス入り口から、少し掠れ気味の特徴ある男の声が放られた。
私は顔を横に向けて、視線だけでその姿をとらえる。
ネイビーの細身のスーツを綺麗に着こなし、すらりと長い手足を軽やかに動かし、デスクの間を颯爽と通り抜ける長身の男。
「おかえりなさーい」「お疲れ様ですー」
彼に向かって次々返される声には、どれも親しみが滲んでいて、彼との心の距離が伺える。
「うーす」
それぞれに適当な相槌を打つ彼の口元にはお決まりのごきげんな微笑。
私の隣のデスク前で足を止めたその胡散臭いイケメンが、奥二重の大人びた目を穏やかに細めて私を捉えた。
これ、私のトレーナー。
「花樫さんただいま。 待った?」
さっきからやかましいスマートフォンの持ち主・長嶺光である。
「……待ってました。 ある意味。」
眉間の不機嫌を隠さずにそう返す私は、営業一課にきて一年目の新卒社員・花樫理子。
隣のチャラついた上司が鼻について仕方ない、真面目に仕事したい派の23歳である。
私から向かって後方にあるオフィス入り口から、少し掠れ気味の特徴ある男の声が放られた。
私は顔を横に向けて、視線だけでその姿をとらえる。
ネイビーの細身のスーツを綺麗に着こなし、すらりと長い手足を軽やかに動かし、デスクの間を颯爽と通り抜ける長身の男。
「おかえりなさーい」「お疲れ様ですー」
彼に向かって次々返される声には、どれも親しみが滲んでいて、彼との心の距離が伺える。
「うーす」
それぞれに適当な相槌を打つ彼の口元にはお決まりのごきげんな微笑。
私の隣のデスク前で足を止めたその胡散臭いイケメンが、奥二重の大人びた目を穏やかに細めて私を捉えた。
これ、私のトレーナー。
「花樫さんただいま。 待った?」
さっきからやかましいスマートフォンの持ち主・長嶺光である。
「……待ってました。 ある意味。」
眉間の不機嫌を隠さずにそう返す私は、営業一課にきて一年目の新卒社員・花樫理子。
隣のチャラついた上司が鼻について仕方ない、真面目に仕事したい派の23歳である。