長嶺さん、大丈夫ですか?
「っ、長嶺さ……」

「理子」

「!」


 なんで、名前……


「ねぇ」


 柔らかそうな唇の隙間から漏れるハスキーボイスがいつもより甘くて、身動きできなくなる。
 
 長嶺さんの手が私の背中のすぐそばに置かれて、再びベッドがギシリと鳴った。

 それは体が密着する、寸前。
 触れそうで触れない、体温や吐息、甘い匂いだけが届くその距離で長嶺さんは、耳元で囁いた。


「理子の処女、貰っていい?」

「!?」


 そして、私の顎に手を添えてクイッとあげさせると顔を傾けた。


「えっ? ちょ、あの、」


 長嶺さんの長いまつ毛が伏せられると、私の心拍は異常値を記録する。


「なっ、?なな、がみね、さ……っ、」


 長嶺さんの胸を押すけど、びくともしない。

 
「だっ、」


 そして、


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